日本政府の公式な景気認識を示す月例経済報告では「景気は緩やかに回復している」との認識を維持していますが、東証に上場する企業の2019年9月の中間決算発表を見る限り各企業とも厳しい現状と言わざるを得ません。
米中貿易戦争が与えた影響が大きい製造業などは、軒並み業績予想を下方修正しており、下半期の見通しも芳しくない企業が目立ちます。
販売業に関しては倍増した企業もありますが、こちらは消費税増税による駆け込み需要と分析されており、けしてこの先の企業業績が明るいわけでもありません。
内閣府が発表した9月の景気動向指数でも8月に続き2か月連続で景気後退の可能性が高いことを示す「悪化」となっており、10月以降の見通しも消費増税後の需要低下やたび重なる台風の被害で消費や企業活動が停滞するとみられており、景気動向指数は「悪化」が続くと予測されています。
そんな日本経済の現状と政府認識とのズレを見せながらも、社会保障制度改革は着々と進行していきます。
第4次安倍政権の総仕上げと位置付けるこの社会保障制度改革は、今後間違いなく訪れる65歳以上を支える現役世代の大幅減少に対応すべく、政府方針を全世代型社会保障検討会議で討議し来年から再来年にかけて法案成立を目指す改革です。
なかでも60歳以上の在職老齢年金制度の縮小・廃止や公的年金の受給開始年齢の上限引き上げ、75歳以上の後期高齢者医療の自己負担2割への引き上げなどを討議していますが、どの内容をとっても65歳以降の自助努力を根底にしているように見えてきます。
60歳になっても公的年金は給付されませんが、「65歳になって公的年金を受け取ってもいいですがフルタイムで仕事を続けてください」「公的年金は70歳以降から受け取ってもらってもいいですよ」「75歳になっても医療費は自己負担2割なので健康に注意してなるべくお医者さんにかからないようにしましょう」。
捉え方によってはそのように聞こえます。
全世代型社会保障検討会議に参加する有識者の経団連会長や聞き取りを受けた日本医師会の会長などは改革案に異議を唱えている場面も見うけられ、ここでも政府側との認識のズレが垣間見えてきます。
ただ、現状でも少子高齢化は誰が見ても今後急速に進むのは間違いではなく、諸外国と比較しても日本の高齢者への社会保障は手厚くなっているとの指摘もあり、やっぱりどこかで高齢者への負担増加を考えなければいけないのかもしれません。
全世代型社会保障検討会議で社会保障制度改革を検討していくとはいっても、このまま政府方針通りに社会保障制度改革は進んでいくような気がしますが。
政府と国民の間には認識のズレがあることがわかっていないのか、それともわからないフリなのか。
いずれにしても、今も将来もこの日本で生きていかなくてはいけません。
今後の日本を生きていくとすれば、ご自分やご家族を守っていくためにしっかりと60歳以降を見据えていかないといけない時代へ到達したのかもしれませんが。