いち早く国民へのワクチン接種を強力に推し進め、同時にロックダウンへと踏み切ったイギリス。
数か月の経済成長を捨てる代わりに、新型コロナに打ち勝ったときの未来に賭けたその英断は、為替相場にかつてないほどの「ポンド買い」を呼び込みました。
2020年12月後半あたりから始まった、ポンド/円の上昇チャート。
赤いロウソク足が怒涛の上昇曲線を描いている日足チャートを見れば、「円」に対するポンド買いのエネルギーが、どれほど凄まじかったのかが一目瞭然です。
半年ほどで約17円上昇と、とんでもない上げ幅を見せました。
しかも、ポンドらしく1円、2円一気に踏み上げていくのではなく、多少の陰線は入るものの階段を一歩一歩着実に登るように値を上げていく、長期の上昇局面でよく見られるしっかりした上昇トレンドを形成しています。
そして刻んだ直近最高値が、2021年5月27日の「156円07銭」。
ポンド/円で156円台を見たのは2018年1月28日以来です。
その時は2017年12月の年末にかけて、アメリカのトランプ政権が打ち出した大型の法人税減税案がアメリカ議会を通過し、株や為替が異常な盛り上がりを見せていた時期。
米国債の利回りがあっという間に3%を超え、見かねたアメリカの中央銀行にあたるFRB(米連邦準備制度理事会)が、あまりの過熱ぶりに政策金利を上げるいわゆる「利上げ」に踏み切り、発表直後に株や為替の大暴落が始まるという事態が起こりました。
この時の大暴落、「温床相場の終焉」とか、FRBのパウエル議長が「利上げ」を発表したため「パウエル・ショック」などといわれています。
もちろん最高値をつけた後、ポンド/円も例外なく暴落していくのですが。
ただ今回は156円を超えても、それほどの落ち込みは見られません。
さすがに156円を超えた後は152円割れまで下落しましたが、それでも再び153円後半や154円台まで戻しています。
6月24日、イギリス中央銀行BOE(バンク オブ イングランド)の金融政策委員会では、「インフレリスクの高まりは確かにあるが、短期的な上昇であり、拙速的なテーパリング(金融引き締め)は、せっかく戻りつつある経済を再び停滞させてしまう恐れがる」ということで、資産買入規模と政策金利を0.1%まま据え置き。
テーパリング観測が後退したことと、延期したロックダウン全面解除を19日以降に設定しているイギリスでは、本日7月5日に映画館などが、10日にはパブやレストランなどが営業再開予定と、慎重かつ順調にロックダウン全面解除へと向かっていることもあり、ここはもう一段の「ポンド買い」があっても良さそうにも思えます。
ちょっと気になるのが「ポンドインデックス」。
ながらく積みあがっていたポンドの買いポジションが、2週連続で減少しています。
事実、ポンド/ドルのほうは一時的なドル買いもあり、だいぶ下目線になってきました。
それでも、緊急事態宣言がまん延防止等重点措置に切り替わったのと同時に、感染力の強い新型コロナのインド型変異ウイルス「デルタ型」の感染者が多発、南米型の変異ウイルス「ラムダ型」が確認させるなど、次々にあらわれる変異ウイルスに再び感染者が増加傾向の日本。
「こんなんで本当に、東京オリンピック・パラリンピックはできるの?」と、首をかしげたくなってきますが、ここでまた緊急事態宣言が発令されるようになり、再び日本への渡航制限がかかることになれば、「円売り」はさらに加速するのでは?
今だって誰も買わないのに。
ということは、そういう不安が薄れないかぎり、ポンド/円の上昇はもうちょっと続く?
だだし、以前のような電車道の一方通行ではなく、もみ合いながらも直近最高値の156円越えまで迫るが、上昇はそこまで。
あるいは、直近最高値をブレイクしたとしてもその前の最高値、2018年1月28日の156円59銭付近がレジスタンス。
そこからはダブルトップをつけて、しっかり下目線か。
ただし、下値は151円近辺。
奇しくも2021年7月5日現在、ポンド/円は再び三角持ち合いを形成中。
日足チャートも151円31銭を底に、上へと伸びたそうにも見えますが。
はたして?
とりあえず、今週半ばまで小幅なもみ合いが続きそうですが、週後半から来週前半にかけて、ちょっと大きな動きを予想しています!