毎年恒例、東京証券取引所で年初めの株式取引がおこなわれる、通称「大発会」。

今年初めての株式取引なので、もしかしたら、豊洲の東京中央卸売市場で今年初めての「初競り(ハツセリ)」みたいに、市場価格よりも「だいぶ盛った」値段で大間のクロマグロが落札されるような、そんなご祝儀相場をイメージする方もいるかもしれません。

かつては、そのような印象もありましたが、ここ数年はぜんぜん違います。

2018年の「大発会」こそ、終値ベースで741円39銭高の23,506円33銭と驚異の上昇幅をみせましたが、そこからが先が良くなかった。

この年、1月の下旬から、株式市場の過熱感を警戒したアメリカの中央銀行にあたるFRB(米連邦準備理事会)では、突如の金融引き締めを開始します。

そのおかげで、アメリカ株式市場は大暴落。

俗にに言う「温床相場の終焉」や、利上げをおこなったFRBのパウエル議長から名前をとった「パウエル・ショック」などといわれる、株式市場の暴落劇が始まりました。

その影響は日経平均株価にも反映します。

2018年に「大発会」までの水準に戻すまで、およそ10か月。

日経平均株価は、2018年10月にようやく年初来最高値を更新したのち、再びアメリカ発の懸念材料から「激落ちくん」状態に入っていくのですが・・・・・

2019年の大発会は前年アメリカの懸念材料をそのまま引きずり、「激落ちくん」状態から始まりましたが、一向に上がる気配がなく、ついに20,000円割れ。

じつは「大発会」の数日前、2019年1月3日の未明に為替相場では瞬間的にドル/円が4円も一気に下がる「フラッシュ・クラッシュ」が起き、世間をざわつかせていました。

それもあってか終値ベースでみると、452円81銭安の19,561円96銭で取引終了。

2019年の株式市場を一言であらわせば、前年からアメリカと中国の間で巻き起こった「米中貿易協議」に振り回された1年。

特に、トランプ前大統領による突拍子もなく twitter から放たれる「トランプ砲」に、全世界の株式市場や為替市場は翻弄されていきます。

逆に言えば、「米中貿易協議」に好転の兆しが見られれば株価はあがり、進展の無さが報道されれば株価は下がる状態。

8月ごろには、アメリカ、中国ともに一歩も譲らぬノーガートでの関税の打ち合いまで発展し、景気後退のサインとされる「逆イールド現象」も起きましたが、年末に進むにつれてアメリカ側が態度を軟化。

最後にはトランプ前大統領の 見事な?手の平返しにより、部分合意までこぎ着けたところで株価は跳ね返っていきました。

このまま日経平均も好転していくと思われた2020年の「大発会」。

ところがそう甘くはなかった。

2020年と言えば、未知のウイルス「新型コロナウイルス」のパンデミックに見舞われた年。

しかしその前に、またもやアメリカのトランプ前大統領の指令により、全世界を揺るがす事件が巻き起こります。

アメリカから外国テロ組織と認定をうけたイランの革命軍防衛隊。

そのイラン革命軍防衛隊の司令官を2020年1月3日未明、アメリカ軍によって暗殺したとの報道が入り、一気に中東情勢に緊張が走ります。(この日、FXで大負けしました!)

司令官はイランでは重要人物。

もちろん、国際情勢に敏感な株式市場は即座に反応。

1月6日に始まった2020年の「大発会」も、終値ベースで451円76銭安の23,204円86銭という結果に。

そしてその後、ご存知の通り、全世界を震撼させた未知なるウイルス、「新型コロナウイルス」のパンデミックに陥っていきます。

新型コロナウイルスによる経済活動の低下を考慮して、各国は金融緩和路線を模索。

金融緩和により大量にバラ撒かれた数えきれないほどの紙幣は、2020年3月におきた恐怖の暴落劇「コロナ・ショック」を見事にV字で跳ね返し、やがて株式市場は2021年に絶頂期を迎える「コロナバブル」に突入していきます。

2021年の「大発会」は前年から始まった金融緩和政策のもとに、大量に流通された紙幣の波にしっかり乗って高値圏のまま2021年に突入しましたが、それでも2020年12月30の「大納会」の終値を上回ることはできず、185円79銭安の27,258円38銭で取引終了。

それでも2021年2月には、平成バブル以来の 日経平均30,000円台 という、もう2度と見ることのできないと思われた株価まで到達することになりました。

コロナバブルおそるべし!

だだ、日経平均で30,000円台を最後にたたき出した2021年9月ごろから、専門家の間では、「遠い海の向こうのアメリカは、これから間違いなく高インフレ(物価上昇)に苦しむだろう!」と囁かれ始めています。

頑なにアメリカの中央銀行にあたるFRBは、「一過性」を主張していましたが。

30,000円台の声は遠のいたものの、2021年12月まで一度も27,000円台を割り込むこともなく、順調に推移ていた日経平均株価は、誰もが2022年も強いものだと思ったでしょう。

この時、金融緩和路線を歩んでいた国は、日本とトルコぐらい。

現に2022年1月4日の「大発会」は、510円08銭高の29,301円79銭を付けます。

3年ぶりとなる、久方ぶりのご祝儀相場。

しかし、2022年の「大発会」後、数日が2022年の株価ピーク。

この後、アメリカのFRBが2021年12月に金融政策を決めるFOMC(公開市場委員会)をおこなった際の議事録が公開され、FRB理事たちによるインフレへの強い警戒感と政策金利の引き上げ、いわゆる早期の「利上げ」観測が現実化していることが明らかとなり、2022年1月初めからアメリカ株式市場は急失速。

その余波は日本市場にも、徐々に大きな影響を及ぼしていきます。

それでも日本の金融政策は緩和路線を貫く姿勢を崩さなかったため、記録的な「円安」環境もあり、アメリカやユーロ圏の株式市場ほどダメージは見込まれていませんでした。

そう、2022年12月20日の12時に日銀が口を開くまでは。

まったくノーマークだった12月の金融政策決定会合。

いつも通りの金融政策決定会合だと思われた矢先、日銀がYCC(イールドカーブ・コントロール)のコントロール幅変更を公表します。

その後、急転直下、事態が急変。

事実上、「利上げ」にも等しい債券金利のコントロール幅変更は、金融緩和路線の修正と捉えられ、年末にもかかわらず日経平均の価格をドンドン下げ始めました。

2022年の年末の流れを引きずったまま迎えた2023年の「大発会」は、案の定、ボロボロ。

一時、400円安を超える下げ幅となり、終値ベースで369円84銭安の25,724円66銭。

この結果には、日銀が下した突然のYCC方向転換だけでなく、アメリカやユーロ圏での高インフレ対策による金融政策により、経済成長の落ち込みを懸念した声が重なって出てきた内容です。

世界経済をけん引するアメリカ金融市場だけでなく、ヨーロッパの金融市場も2023年から2024年にかけて、リセッション(景気後退)入りするとの懸念も強く残っています。

逆に、決してリセッション(景気後退)入りするとも言い切れない見解も少なくはなく、現時点で明確に判断がつかない状況かもしれません。

そこに、2023年3月で日銀を退陣する黒田総裁の後任人事も絡んできます。

もし、新しい日銀総裁が10年ほど続いた金融緩和路線を否定したら、日経平均にはキビシイ冬の時期が訪れそうです。(日経平均だけではありませんが)

ただ、ひとつ言えるのは、もし数年ほどアメリカの金融市場が低迷しても、北米の巨大消費マーケットを持つアメリカ市場は、国内消費が飽和状態の日本と比べても、リセッション後の経済発展は十分見込める領域にあります。

もしアメリカがリセッション(景気後退)に陥っても、数年後には高い確率で盛り返してくるでしょう。

だとしたら、むしろ2023年にアメリカの株式市場が低迷しても、これから投資をおこなう人たちにとって、「絶好のチャンス」になるかもしれません。

だって、投資の基本は「安く買って、高く売る」ことですから!