日本時間2025年9月5日21:30、アメリカの「雇用統計」が発表されました。
この「雇用統計」は雇用情勢から見たアメリカの経済状況を反映しているとして、アメリカの中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)だけではなく世界中の金融機関や投資家たちが注目する最も重要な経済指標の一つです。
おもに「非農業部門雇用者数」と「失業率」が注視されますが、発表後はその数字が金融政策や株価、金利あるいは為替などに大きな影響を与えることとなります
そのアメリカの「雇用統計」ですが、ここ最近発表される数字は市場予想よりもかなり悪い。
今回発表された8月の「雇用統計」は、「非農業部門雇用者数」が+22,000人と市場予想の約75,000人を大きく下回りました。
「失業率」は前月の4.2%から4.3%に上昇し約4年ぶりの高水準。
これで3か月連続となる低迷した数字となったワケですが。
これほど悪化したのは2020年の新型コロナ・ショック以来。
アメリカの労働市場はかなり弱いといえるでしょう。
この結果を受けてドル/円は−0.99%下落し、およそ147.03円 にまで円高が進むことに。
ドルインデックス(主要6通貨に対するドル指数)は−0.70%の下落を示しています。
米国債利回りも短期・長期ともに急低下(2年債:約3.48%、10年債:約4.07%)し、金利低下圧力が明確化しました。
ここ3か月の「雇用統計」ではアメリカの労働市場が明らかに減速していることを示しましたので、これで”9月利下げ”がより現実味を帯びてきたように思われます。
そして市場の関心は9月16・17日の金融政策を決めるFOMC(公開市場委員会)では、予想どおり”25bp”の利下げをおこなうか?
あるいは、弱い「雇用統計」の結果を踏まえてもっと利下げに踏み込むのか?
ここ数か月の「雇用統計」から見えてきた労働市場の低迷から”50bp”の可能性も一部で見込まれているとして、世界的な金利環境の変化を織り込む声も聞こえるようになりました。
実際、FRBの利下げが現実となればドル金利の魅力が低下し、円高が進む圧力になると見られます。
そのうえ経済活動の停滞懸念も高まっており、ドル売り・円買いが基調となりやすい環境が続くでしょう。
2025年9月以降「ドル安・円高」が進むとなれば、私たちの日常生活にはさまざまな影響が予想されます。
まず、円高によって海外からの輸入品、特にアメリカからの製品の価格が下がる可能性がありますので、これにより食料品や家電製品など輸入に依存する商品の価格が安くなるかもしれません。
次に海外旅行の際の費用にも影響が出ます。
ドルが安くなることでアメリカなどへの旅行コストが高く感じることでしょう。
旅行を計画する際には、そうした点を考慮する必要があります。
また輸出業への影響も無視できません。
円高が続くと日本の輸出企業は競争が難しくなり、特に自動車や電子機器などの輸出が減少する可能性があります。
となれば日本の経済全体に大きな影響を及ぼすことになるでしょう。
さらに輸入品が安くなる一方で輸出業の不振が長引くと、結果的にインフレーションが進む可能性も心配です。
経済全体のバランスが崩れることで、物価の変動が起こることがあります。
最後に円高は金融政策や金利にも影響を与える可能性があり、これにより住宅ローンや貯蓄金利も変動することが考えられます。
これらの変化に適応するためには、柔軟な思考と行動が求められるでしょう。
このように「ドル安・円高」の状況が進んだ場合、私たちの日常生活には多くの影響が及ぶ可能性がありますので、金融資産を守る意味では十分な備えと情報収集が重要です。
我が国日本の中央銀行にあたる日銀でも時期についての言及は避けていますが、「いずれは利上げをおこなわなければならない」ことを公表していますので将来的にはさらなる「ドル安・円高」局面も予測できます。
2020年にやってきた新型コロナのパンデミックによりかなり日常が変化しましたが、2025年9月以降はその流れも急速に2020年以前へ巻き戻るかもしれません。
そうなれば、「ドル高」「米国債高金利」の恩恵を受けた金融商品も価値が変化することでしょう。
”ドル建て”の金融資産をお持ちの方は、ポートフォリオを見直す時期が来たかもしれませんよ。