日本国内では新型コロナウイルスの感染拡大が報道を埋め尽くす中、今週の2月19日から20日にかけて為替相場で異変が起こり始めました。

いままですっかり鳴りを潜めていた米ドルが突如2月19日に暴騰、それまで幾度となく跳ね返されていた1ドル110円の壁を難なく飛び越え、いとも簡単に111円59銭までドル高が進むと翌20日には112円22銭まで到達、2日間で約2円40銭もの爆上げ。

この急激なドルの急騰には金融市場もさぞ驚いたことと思います。

というのもこの急激なドル高は、さして理由が見つからないからです。

2月17日、本国アメリカは祝日のためお休みでしたが、18日のニューヨーク株式市場は前日比165ドル89セント安の-0.56%、19日は前日比115ドル84セント高の+0.40%、20日は前日比128ドル05セント安の-0.44%とどちらかというと今週のNYダウは下げトレンドにも見えます。

日経平均株価にしても18日は前日比329円安の-1.40%、19日は206円高の+0.89%、20日7は8円高45銭の+0.34%と為替を2円以上突き動かすような流れとはけして思えません

アメリカで為替を左右するような大きな経済指標が発表されたわけでもありません。

むしろいままでならば株価に落ち込みが見られると、すぐさま為替が反応して円高になる傾向が見られましたが。

なにより何事かが起こったとき強く反応する「有事の金(ゴールド)」相場が異様な高値を見せています。

そのうえ米国債の利回りも一段落ちの1.5%中盤。

今週の経済状況は収束の気配すら見せない新型コロナウィルスの影響もあり、あまり芳しくないともいえる状況です。

このような流れが見られるとき、いままでのセオリーでいくと円高になることが予想されてきました。

それが極端なドル高状態に推移しています。

ではこの今までとは違う「有事のドル高傾向」はどうして発生したのか?

いろいろ調べてみましたが、ひとつ興味深いことを発見しましたのでご紹介したいと思います。

2月18日の朝刊は「日本のGDP5年半ぶりの年6.3%減」という記事が一面を飾っていました。

この記事は消費増税が始まった2019年10月から12月までの国内総生産速報値が前年比で1.6%落ち込んだことで、今の経済状況が仮に1年間続いたとしたら1年後のGDPは6.3%ほどのマイナス成長になるという発表です。

昨年10月からの消費増税からの個人消費の落ち込みやたび重なる台風の被害もさることながら、2020年1月から3月にかけてのGDPは暖冬からの観光地への影響そして新型コロナウィルスが日本経済に与える影響などが加わると、実際はもっと落ち込むことが想定されています。

さらに各社発表の企業業績の悪化も手伝って、今後の日本経済への見通しは必ずしも明るいものとはいえません。

うわさ段階ですが日本での新型コロナウィルスの感染者拡大によって、期待されている東京オリンピックの中止もささやかれ始めました。

かたやアメリカは大統領選挙の年でトランプ大統領の株高誘導への政策もあり、昨年は米中貿易協議の進展が足枷になってしまい一時的な経済の落ち込みもありましたが、実質的に見ればアメリカ経済は堅調さをキープしているとの見方が有力です。

そう考えると先行きが不安な日本に資産を預けておくよりは、経済動向か活性化しているアメリカの資産に預けておくほうが安全だということも道理的です。

つまり、いままでは株式市場の暴落や東日本大震災のような日本に非常事態が起きても、有事には安全資産とされる日本の円資産にシフトする傾向がありましたが、日本の景気動向を踏まえ有事に日本の円資産にお金を置いていたのでは危険だとする相場判断が出来上がりつつあるということです。

そしていまの安全資産はアメリカのドルで、有事にはドル建て資産にシフトするようになってきていると。

来週あたりから海外の機関投資家やヘッジファンドなどが保有している日本の円資産、とくに株などを本格的に売り始める傾向が強まり、もはや何事か起こったときに資産をリスクから回避させるためドル建て資産にシフトするようになれば、金融市場では安全資産は円建て資産ではなくドル建て資産であると判断していることになります。

そうなれば、もはや日本の円や円建て資産はどんどん世界から資産価値を問われ、アメリカのひとり勝ちのような状態になってしまうような気もしますが。

日本政府では将来において公的年金の給付に関する数字を公表する際には、ある程度日本が経済成長することを前提として試算を見込んでいます。

それが経済成長が見込めないとすると、将来の公的年金の給付を減らすか別の財源を確保するかになってきます。

いずれにせよ、現状から見た日本の近い将来は決して明るく希望に満ちた世界ではなさそうです。

そして、もしかしたら世界中の金融市場では日本の将来を見越して円資産に見切りをつけ始めたのかもしれません。

もしこのような状況が続く日本なら、皆さまは日本円の資産ばかりだと不安になりませんか?