たとえば、雪の降りそうな非常に寒い冬の夜、エアコンの室温を28℃に設定しテレビでゴールデンタイムに流れるお気に入りのバラエティ番組にチャンネルをあわせ、炊飯器でご飯を炊きながらオーブンレンジで食べ物を温めIHクッキングヒーターで夕飯を料理、同時に食器洗い洗浄機で食器を洗いながら洗濯物を乾かすためにドラム式洗濯機で衣類を乾燥させていた時に、ご家族の方がお風呂あがりにドライヤーを使った瞬間、ご自宅ではすぐさま停電が起きてしまうことも。
一般的にアンペア数の高い電化製品を同時に使い、電力会社との契約量を超えた電気が使用されたとき電気の流れを遮断する、いわゆる「ブレーカーが落ちる」ということが起きるからです。
そしてご家庭で一定量を超えた電気が使用されたとき電気が遮断されてしまうように、株式市場でも極端に株価が上昇あるいは極端に下落しすぎて、その変動幅が7%を超えてしまうと株式市場では売買を遮断する「サーキットブレーカー(取引停止)」が発動します。
私自身はじめてこの「サーキットブレーカー」の意味を知ったのは、2016年1月4日の中国株式市場。
それまで驚異的な出来高をたたき出していた中国の株式市場において、2015年6月ごろから急落が相次ぎ、そのたび証券監督当局の強引な下支え策を繰り返しながらもなんとか持ちこたえていた中国株式市場。
持ちこたえた背景には「上場企業の株主に持ち株の売却を半年間禁じる」という中国らしい規制も入っています。
それでも中国株式市場での株価の下落基調は止まらず、ついに2016年1月4日中国の株式市場でサーキットブレーカー制度を導入しました。
そのサーキットブレーカー制度を導入した、まさにその日2016年1月4日に上海や深センなどの株式市場でさらなる株価の暴落が発生、サーキットブレーカー制度を導入とほぼ同時にサーキットブレーカーを発動という史上まれに見る異例の事態がおこりました。
その後も中国の株式市場では下落が続き1月7日もサーキットブレーカーが発動しましたが、突如7日の深夜に中国証券監督当局がサーキットブレーカー制度の発動見合わせを発表、そして制度自体を撤回することになりました。
その時以来サーキットブレーカーの言葉は知っていても、あまり聞かなくなったような気がします。
それほど近年の株式相場は安定していたのですが、ここにきて2020年3月のニューヨーク株式市場では頻繁にサーキットブレーカーが発動されています。
たしか3月の第2週目で3回、今週は16日と18日でもう2回の発動。
そのうえNYダウは節目の20000ドルを割り込み始めました。
もちろん我らが日経平均株価も16000円台に突入しています。
しかもアメリカの中央銀行にあたるFRB(米連邦準備制度理事会)がFOMC(米連邦公開市場委員会)を前倒しでおこない、政策金利の引き下げ「利下げ」を1%と限りなくゼロ金利にしたにもかかわらず、NYダウの下落は一向に収まりません。(日経平均もですが)
金融市場で繰り返される前例のない異常事態は、とどまる気配すら感じさせないまま時間だけが過ぎていきます。
そのうえ新型コロナウイルスがもたらした影響は皆さまの日常生活にも支障をきたす危機的状況へ向かっているような。
もはや新型コロナウイルスへの有効な手段を見つけることが、すべてを解決に導く糸口になってきているように思えてきました。
そんな中、アメリカの政策金利を限りなくゼロ金利に近づけたことで日米の国債利回りの金利差がほとんど無くなってきたにもかかわらず、「アメリカドル」はこの異常な金融市場の中でひと際強さを誇っています。
日米の金利差がないにも等しい状態で1ドル90円台突入かと思われましたが、とんでもない、NYダウがいくら値を下げようが政策金利がゼロに近づこうが1ドル107円後半から109円台をキープ。(3月19日19時現在)
明らかに安全資産として「アメリカドル」が買われています。
いままでのセオリーを打ち消す、「リスク回避のドル買い」。
つまり今回の新型コロナウイルス・ショックを機に、安全資産としての価値は「日本円」よりも「アメリカドル」のほうが上と判断されていることになります。
リスク回避のドル買いが金融市場でのスタンダードになりつつあるのかは、今後もドル/円の推移を注意深く見守る必要がありますが、たぶんこの金融市場の異常事態に日本円に対してアメリカのドルがここまで値を上げられるのは、「リスク回避のドル買い」としか私は理由を付けられませんが。(ほかの理由がわかる方は教えてください!)
「安全資産としての円」という最大にして最後の優位性を持っていた日本円。
悲しいかな、その価値すら失いそうな立場に追い込まれている今の日本。
もしこの先のトレンドが「リスク回避のドル買い」と変わってきているとしたら、皆さまの資産は日本円の資産ばかりで安心ですか?