金融緩和というドーピングを受け、いままでどんな悪い経済指標が飛び出してもすぐに回復し強さを誇示してきた株式市場でしたが、ここにきて翳りが見え始めたように思います。
いつの時代も各国の金融市場で波乱が始まるその発端はアメリカ発ということが多いのですが、好調すぎるナスダックの裏側で、いま新型コロナを抑え込むどころか新型コロナの第1波が勢力を増して感染拡大をさらに広げているのがいまのアメリカです。
2020年4月の雇用統計、非農業部門雇用者数が2050万人の減少と失業率が14.7%という統計を始めて以来、史上最悪のとんでもない数字が出てきた現状も無視できません。
2020年5月の雇用統計は非農業部門雇用者数が250万人の増加と失業率が13.3%と、予想された「更なる悪い数字」が飛び出すことなくやや改善されたことで株価の押し上げ材料とはなりましたが、アメリカの経済状況を把握する上で重要な雇用情勢がけして上向きになったわけではありません。
そこにきて新型コロナの第2波というよりも、沈静化に見えた新型コロナの第1波が勢力を増して接近してくるハリケーンのようにアメリカ西海岸あたりから感染者がどんどん広がりを見せています。
つまり、再び経済活動の停滞が十分あり得る状況がアメリカでは続いています。
もともと強いアメリカ経済の成長があったから株価が高値圏内をキープしていたわけでもなく、昨年より中国との貿易協議などで一喜一憂した場面も多く、なおかつトランプ大統領の再三にわたる強い要請でアメリカの中央銀行にあたるFRB(米連邦準備制度理事会)は米中貿易協議の難航もあり予防的と称し政策金利の引き下げ、いわゆる「利下げ」をおこないながらNYダウなどの株価を押し上げていった経緯があります。
いまにして思えばあの時の利下げ、「新型コロナのパンデミックがやってくるとわかっていたら絶対やらなかったのに!」とFRBは後悔しているかもしれませんが、昨年ですら米中貿易協議での悪材料から米国債利回りが長期と短期で逆転する逆イールド現象も起きていますし、けして堅調なアメリカ経済とは言えない状態でした。
そしてこの新型コロナのパンデミック。
そのパンデミックに巻き込まれたアメリカは、どうやら新型コロナの沈静化にうまくいかなかったようです。
それでも株価は堅調。
実体は疲れ切っているのに大量のカンフル剤を打ち込まれ好調なパフォーマンスを見せ続けてはいますが、もうそろそろ一旦休ませてほしい。
そんなささやきにも似た兆候が先週あたりからNYダウやナスダックに見えてきたようにも思いますが。
今週のアメリカは独立記念日も控えていますし、その前にニューヨーク株式市場でちょっとした暴落が起きるなんてことも考えられます。
株はもともとキャピタルゲイン(売買益)を見込むものです。
皆さんが仮に大口の株ディーラーだったとして、
「実体経済はだいぶ落ち込んでいいるし、この先の見通しも不透明。」
「聞こえてくるニュースも明るい話題はほとんどない。」
「それでも株価はながらく高値圏内にいる。」
「金融緩和は続くし、これからまだまだ株価は高値を目指す。」
だから買い!
「いやいや経済状況をみても、もうそろそろ株価は天井付近に近い。」
だから売り!
その答えは今週あたりに見れそうな気がします。