「入院しても高額医療費で何とかなるから」というお言葉をいただくときがあるのですが、医療費だけならそうかもしれません。
入院などで医療費をお支払いする際、医療費の自己負担上限は高額医療費制度により決められています。
いまは事前請求が一般的になってきましたが、もし医療費の自己負担上限を超えてお支払いした場合、お持ちの健康保険証を交付している健康保険組合や健康保険協会、自治体などから上限を超えた額が還付される仕組みになっています。
医療費をお支払いする上限の高額医療費は、年齢や年収よって変わります。
では入院してしまった場合、医療費しか負担しないのでしょうか?
ここからは医療費には含まれない入院時に全額自己負担となる部分を見ていきます。
朝昼晩、毎日かかさず出てくる食事代はどうでしょうか?
じつは住民税非課税世帯のように一部の軽減措置が適用になる方を除けば、全国一律で入院時の食事代は1食460円になっています。
毎日3回必ず出てくるので、1日460円×3回で1380円 10日入院すれば13800円となります。
あとは雑費。
入院時のパジャマやちょっとした飲み物、テレビカードなどですが、こちらは人それぞれ。
それでもまったくかからないわけでもありません。
そして自己負担が一番大きいと思われるのが「差額ベッド代」。
差額ベッド代が発生するのは4人部屋からとなります。
以前は8人部屋などの相部屋が主流でしたが、近年では相部屋といえば4人部屋が基本となってきています。
個室という選択肢もあります。
こちらの差額ベッド代、4人部屋で1日2000円台から「ホテルか!」と思わせるようなとんでもない料金の個室まで、病院さんによって料金はそれぞれ設定がバラバラです。
なかには4人部屋はなく相部屋は2人部屋からという個人病院さんもあります。
しかも病状によっては「相部屋ではなく個室を準備された!」などのケースも生命保険の業界ではよく聞く話です。
以上のような入院時の費用をあらためて確認してみると、
例えば、年収370万円から770万円までのごく一般的な方が、入院での医療費の総額が100万円だったとします。
そうすると 80100円+(1000000円-267000円)×1%で87430円が医療費の自己負担上限額となります。
そこに食事代が1日1380円、30日にすると41400円
雑費を1日1000円と高めに見積もって30日で30000円
合計すると30日で158830円、1日あたりにしてみると5294円ほど
そこに病院さんや病状によって変わってくる差額ベッド代が加わってくることになりますが、いざ入院となれば最低でも医療費・食事代・雑費だけで1日5000円以上のお支払いが発生することとなります。
そのほかに、救急車で緊急外来に休日や夜間などに運ばれると料金は加算されますし、同じケースでも年収が770万から1160万円の方だと医療費自己負担上限が171820円、年収1160万円以上だと医療費自己負担上限が254180円へと変わってきます。
都市部や県の中心部などにお住まいならあまり気にならないかもしれませんが、地方では医療格差が叫ばれていますし、ただでさえ厚生労働省は医療費に占める割合が多い入院費を抑制しようと、病床数を減らすべく公立や公的病院にかかわらず民間病院も含め統合や再編、規模縮小などの姿勢を崩していません。
現在でもいわきの病院から「うちの病院じゃ見れないから郡山の病院に行ってくれ!」あるいは「水戸の病院に行ってくれ!」などという事例が聞こえてきています。
そして医療費や食事代、差額ベッド代などは今の話です。
今後医療費や食事代、差額ベッド代等が下がると思いますか?
ご自身のためにも大切な方のためにも、「入院は高額医療費で何とかなる」というお考えはあまり適切ではないと感じております。
余りある収入が一生途切れることなく入ってくる方となれば話は別ですが。