ちょっと老けて見られる私ですが、まだ50代前半です。
それでも、20代の方や30代の方から見れば間違いなく「初老に差しかかった中年のオヤジ!」にしか見えないと思います。
そして10年もしないうちに60代になってしまいますから、もう少しで「オヤジ」から「ジジイ」へと呼ばれ方が変化するかもしれません。
「まあ、それも仕方ないかな」などと思いながらも、60代を意識し始めたときにふとクリント・イーストウッドの映画「グラン・トリノ」をまた見てしまいました。
この映画、日本での上映開始は2009年です。
もう10年以上前の映画ですが今見ても古臭さはまったく感じられず、もう何回も見ていますのでストーリーも結末もわかっているのですが、どうしてもまた見たくなってしまう魅力が満載の映画なのです。
クリント・イーストウッド扮する朝鮮戦争に出兵し活躍、帰国後はフォードの自動車工場に勤め、たぶん定年になって今は家具修理などの便利屋をやっているポーランド系アメリカ人のウォルト・コワルスキー。
自宅にはいつも星条旗が掲げられているところをみるとたぶん典型的な愛国者。
そして保守的。
モーターシティでもあったデトロイトに住み、口が悪くぶっきらぼうで変わり者というか頑固者。
ピカピカの72年型フォード グラン・トリノを所有。
最愛の妻に先立たれ、2人の息子たちは家から離れそれぞれ家庭をもち、ウォルトとは別々の生活を送っています。(息子が日本車のセールスをしているのが気に入らないご様子)
見始めて比較的早い段階で、生前に奥さんが信頼した町の神父さんに噛みつく場面など、クリント・イーストウッドの年老いた風貌や白髪、服の着こなし方など、本当にその辺にいそうなアメリカの頑固で面倒くさそうなじいさんぶりを見事に演じきっています。
そんな中、ウォルトが住む家の隣にベトナム・タイ・ラオスの山岳地帯に多いモン族出身で、大所帯のローの一家が引っ越してきます。
もともとデトロイトの町に東洋系が多く住みつき、いまではすっかり東洋人の町に変わりつつある現状が面白くなかったウォルトは、ロー家に対し怪訝な表情を浮かべ警戒感を強めていきます。
そして案の定事件は起こります。
ロー家の長男であるタオ・ロー。
優しい性格で内向的なタオ。
そんなタオのもとにストリートギャングのリーダーでもある従兄が、タオをギャングに引き入れようとタオの家にやってきますが、偶然にも隣の家にピカピカの72年型フォード グラン・トリノがあるのを発見。
ストリートギャングのリーダーの従兄は、72年型フォード グラン・トリノを盗んでくるようタオに命じますが・・・・・
ここから口が悪く頑固で面倒くさいじいさんのウォルトとロー家との交流がはじまり、そして優しくて内向的なタオへと生き方の指針を示していくのですが、あまり話すとまだ見ていない方の楽しみが半減してしまいますので。
ストーリー展開も見事。
映像の視点もややこしくなく素直です。
そして衝撃のクライマックス。
ざまざまな経験を積み重ね悲しみも苦しみも知っている年老いたウォルトが、周りを巻き込まないようにとった最後の決断。
最高にクールで感動しますから!
戦争での精神的後遺症や人種問題も含め、燃費の悪い自国の車から日本車が台頭していく時代背景など、世相を反映しながらも古き良き意思を信じた若者に託していくような想いが、海沿いの現代的な街並みを運転するウォルトの犬を乗せたタオとフォード グラン・トリノにエンドロールで表れてているような。
まだ見ていない方はぜひ。
おすすめしますよ。
ウォルトのように口が悪く頑固者でもカッコよく年をとれたらなあ!