まだ投資信託をご案内していた時の話。

いまから7,8年前のことになりますが、既存の貯金商品である定期預金などの利息は、もう見る影もなかったときのことです。

それならば、「少しでもお客さまの利益につながれば」ということで投資信託のご案内を始めたのですが、もうすでに他の金融機関で投資信託をお勧めされ、口座を開設しファンドをお持ちのお客さま、あるいはファンドを購入したことがあるお客さまが多数いらっしゃいました。

ただ、保有している投資信託の運用状況をお聞きすると、大抵は渋い顔になります。

以前購入したことがあるお客さまに至っては、投資信託に対する拒否反応が強めな印象。

ということは、皆さまお分かりだと思いますが、投資信託で運用がうまくいってないお客さまだったり、投資信託を購入してイヤな思いをした経験をお持ちのお客さまです。

いまでこそ「確定拠出型企業年金」による企業での取り組みや、「iDeCo(イデコ)」、「NISA」などで個人としての資産形成を促す風潮が見られますが、当時はそれほど個人の資金需要に対して、投資信託での資産形成が第一線級のメジャーな活用方法とまでは捉えられておらず、浸透度合いもまだまだ。

投資信託=損をする!危険!怖い!というイメージがまだ色濃くあったとき。

どちらかというと、資金に余裕のあるシニア世代の方が預貯金以外での資産の振り分けをご提案され、余剰資金で投資信託を購入していたようなところが見受けられました。

つまり、「お使い道がお決まりでなかったら、投資信託に預けてみてはどうでしょうか?」的な。

ただ、使い道のないお金だろうが数年後に使う予定のお金だろうが、投資信託を購入したがために自分のお金がみるみるうちに減っていく様を体験してしまうと、「投資信託なんて、もう2度と買うもんか!」となる気持ちもわからないでもありません。(一応、トレーダーなので!)

とくに、ある一定層のシニア世代にとって、今あるお金とは「地道にコツコツ貯めてきた」意識が強く、貯金や国債の金利が良かった時代をリアルに体験しています。

銀行に預けてお金が減るなんていうことは考えにくかったのかもしれません。

それが、「銀行に預けたら、お金が減った!」なんていう感覚を持ってしまうと、短期的な下落局面であれ、回復基調にいつ乗るかわからないのが金融相場。

その商品が投資信託となれば、受け入れがたいのも当然かもしれません。

それでも、私どもが投資信託をご案内するようになってから、投資信託を購入したことでしっかり利益をつかんだお客さまもたくさんいます

それじゃあ、投資信託を購入してしっかり利益を出したお客さまと、損益を抱えて手放してしまったお客さまと何が違ったのか?

この違いは2つあります。

まずひとつは、「ファンド選び」です。

じつはここが非常に重要で、今はそうでもなくなったといわれますが、以前は金融機関に入ってくる手数料が大きいファンドほど購入させようとする傾向があったといわれます。(あくまでもウワサですけど)

たしかに、お客さまがお持ちのファンドを確認すると、「ん、なんで?」と思う節もあります。

「なんで初めて購入したファンドが新興国債券なの?普通それ初めて購入する人に説明しないでしょ!」とか、

「どうして初めて購入したファンドが日経平均の指数連動型なの?」とか。

「初めて購入するんだからさ、もうちょっとコア(値動きの穏やかな投資信託での中核をなすようなファンド)な銘柄から入っていけよ!」と、常々思ってましたが。

いくら自己責任だとはいえ、何も知らないお客さまがいきなりそのファンドは選ばないでしょ。

しかも、お客さま負担の購入手数料や運用管理費も高いし。

そして、もうひとつは「分配金」です。

分配金とは、決算ごとに発生した利益をファンドをお持ちのお客さまに、口数によって利益を還元するのですが、この分配金、利益が出なくても発生するのが投資信託の特徴です。

運用がうまくいって利益が出た場合、普通分配金として税金が引かれて支払われますが、利益が出なかったときは「元本払戻金」として、そのまま口数に応じて元本を削って支払われます。

この場合、元本払い戻しなので、税金は引かれません。

すなわち、利益が出なかったときは自分の預けたお金を小分けにして受けとっています。

この分配金は決まった日付に支払われますので、分配金受取を選択された場合「毎回お金が受け取れていいわ!」と勘違いしている方がたくさんいますが、それは大きな間違いです。

分配金は利益が出ても出なくても発生しますので、受けとってしまえば決して口数が増えることはなく、逆に運用環境が悪化したときはどんどんファンドの評価価値を下げる原因となっていきます。

しかも分配金の支払いは約束されたものではなく、運用状況が悪ければ突如、分配金が減ったり支払われなくなることもしばしば。

よく何年も投資信託を保有していて相場環境が良好なのに、保有しているファンドの評価価値が一向に改善しないまま、「私の持っているファンドは元本と分配金を合わせてトントンなので悪くないかな」と言っている方がいますが、それ、投資に失敗してますから!

せっかく投資信託を購入したんだから、資産の増加を目指しましょうよ。

分配金を当てにせずに。

なかには分配金を受けとって、その分配金で別のファンドを購入している方を見かけましたが、両方マイナス運用だったらどうするんですかね。

金融機関の思う壺だと思いますが。

ここは分配金を受け取らず、分配金を再投資してドンドン口数を増やしていきましょう。

目指すところはあくまでも資産形成ですから。

もっと細かいところまでお話すれば、購入する際のポイントはいくつかありますが、とりあえず「ファンド選び」と「分配金再投資」を心がければ、それほど「投資信託で失敗した!」なんてことにはならないと思いますけど。

だって、私は投資信託で年利10%以上の利益が出ましたから。