リセッション(景気後退)
この言葉をはじめて聞いたのは2019年。
いまと同じように、異常に暑い8月でした。
当時のアメリカは、自国が第一の保護主義を唱えたトランプ政権。
アメリカの貿易赤字解消を掲げ、不当にアメリカの産業を中国主導で脅かしているとして、国家安全保障上の理由から、中国からの輸入品に関税をかけまくっていたとき。
対する中国も一歩も引かず、追加関税で応戦。
ここで全世界を巻き込んだ、「ノーガード」で関税の撃ち合いを展開していたのですが。
ただ、習 近平国家主席と中国共産党はまったく引かなかった。
最後まで。
それが2019年の暮れ、翌年おこなわれる大統領選を意識したのか、再選を目指すトランプ大統領は突如、今までやってきた強硬な対中貿易政策を、あまりにもあからさまな、「手の平返し」とも思える融和な姿勢を取り始めます。
ここで米中貿易協議は、両国、部分合意のもと、いったん幕引きとなりました。
このとき、トランプ大統領のTwitter、俗に言う「トランプ砲」にさんざん踊らされてきた FX や CFD のトレーダーたちは、「いままで何だったんだ!」ときっと思ったはず。
トレーダーばかりではなく、ずーっとこの間、世界の金融市場はトランプ大統領の一挙手一投足に、混乱しまくりでしたから。
しかも、株式市場や為替市場の急落はもちろんのこと、トランプ大統領がFRB(米連邦準備理事会)にゴリ押しした、訳の分からぬ「利下げ要求」もあり、かつてない相場環境に。
2019年8月には、近い将来に景気低迷を予感させる「逆イールド現象」もおきています。
そのとき、市場に流れた言葉がリセッション(景気後退)。
そして2020年、
中国 武漢発の未知のウイルス、「新型コロナウイルスのパンデミック」が全世界を震撼させます。
経済活動は窮地に。
そこで発動した量的金融緩和は、かの有名な金融危機「リーマン・ショック」をはるかに凌ぎ、世界各国の金融市場では、かつてないほどの資金が大量に流通し始めます。
そして、その資金は、当然のように投機的な市場にも流れていきました。
余りある資金は「コロナバブル」を生み出し、アメリカを代表する株価3指数(NYダウ・ナスダック・S&P500)は、上昇するたび史上最高値を更新。
アメリカでは失業保険の上乗せがおこなわれ、一部の業種では働いているより、高い給付を受けられるほどに。
そのほかにも、経済活動の低迷から消費意欲の拡大を計った臨時給付金が4回。
その影で、雇用環境は新型コロナの影響で、人と対面する業種の人員確保が困難になります。
そのうえ、しっかりしたキャリアを持つミドル世代は、株式投資に意欲的だった世代でもあり、401K(確定拠出年金)を出始めから積み始めた世代。
そのミドル世代が、長年積み上げた401Kや長らく続けた株式投資が、折からくる株式市場の恩恵を受け、もうガムシャラに働く必要がなくなったほどに膨れ上がったことで、リタイアを考え始めました。
経験も実績もある、簡単に補充など効かない、企業の中核をなす人たちが。
この雇用状況の悪化が、現状の労働力を維持する意味で賃金インフレを呼び込み、その流れは製品価格に転嫁され、いま世界中で深刻化されている高インフレ(物価上昇)につながっています。
このインフレ(物価上昇)を抑え込もうと、主だった先進国の中央銀行は躍起になっていますが、なにせ今回のインフレ(物価上昇)、各国中央銀行の予測を超えた、はるかに強大な数値にまで発展してしまったため、ある程度の犠牲を伴うことになりそうです。
それが株価。
2020年から2021年にかけて、株価は金融政策の下、驚くほど好調に推移してきましたが、ふんだんに金融市場で流通させた資金を、今度は逆に債券を売って資金を引き上げることになります。
債券は売られれば、金利は上がります。
このことが株価には非常に悪影響で、よりローリスクで株式の配当に近い金利の債券へと心理が傾き始めました。
そのうえ、主要先進国の中央銀行では、市場予測を超える上げ幅で政策金利の引き上げ「利上げ」をおこない、今ある高インフレの抑制を急いでいます。
ゆえに企業の資金調達コストは上昇中。
利上げは企業の設備投資の縮小ととらえられ、同様にローンを組むような高額商品の個人消費も低下することから、最終的に企業業績の低迷につながり、景気の悪循環が指摘され始めました。
つまり、これから株価の下落と企業業績の低迷、個人消費の低下から、リセッション(景気後退)に向かう可能性も想定されています。
冒頭でもお伝えしましたが、コロナ前もアメリカは、それほど絶好調とは言えなかっただけに。
今後は企業単位で、ある程度の業績や好決算を伴わない限り、株価の上昇は難しのでは。
そうなるとセクター別(分野)に株価の明暗クッキリ分かれてきそうで、「インデックス」にとってキビシイ状況となりそうです。
じゃあ、アメリカ株価3指数はもう終わりなのかといえば、決してそういうワケではありません。
インフレはすでにピークアウトしたという見解もあり、雇用改善に兆しが表れれば、政策金利も下げざるを得ませんし、企業の投資ニーズも復調してくるでしょう。
有望なグローバル企業の業績や決算は堅調ですし、もともとアメリカは個人の消費意欲が旺盛な国。
巨大消費大国の北米マーケットには、これからの経済成長も十分期待できます。
ただ問題は、これから株価がどこまで落ち込むか。
それとも、いったん底打ちした?
そんなこと、誰にもわかりません。
インフレはピークアウトしたかもしれませんが、まだまだ物価は高水準をキープしています。
だから、投資戦略的にここ1,2年、株式ファンドへの全力一括投資はちょっとキケン。
いつかは転換期がくるでしょうが、もし今、一括投資したらイライラしながら、それまで気長に待つか、ほっといても問題ない楽観的な思考が不可欠。
できれば、投資予定資金を数か月ごととか半年ごとのように、何回かに分けて買い増しするような、時間を空けた分散投資を目指したいところ。
アノマリー(経験則)的には、これからサマーバケーションシーズン。
薄商いの時期に入るので、9月のレイバーデイ(労働者の日)までは下落基調が継続か?
それでもこれから、去年までや2020年の下半期のような劇的な上昇相場は期待できないので、少なくても今年,来年は「仕込み時」と考えたほうがいいでしょう。
月1購入の長期積立投資なら問題ないですが。
ここは原点に立ち返るときかも。
株式投資は、「安く買って、高く売る」、そして中長期的な視野が基本ですから。