中国経済の減速が止まりません。
10月18日に発表された第3四半期、7月から9月にかけてのGDP(国内総生産)が6%と1992年以来の低い成長率を記録しました。
もっとも中国のGDPに関しては2007年以来発表されるたびに成長率が下がっていますので、成長度合いが2007年をピークにどんどん伸びしろがなくなってきたとも言えますが。
ここ数十年で爆発的な成長を遂げた中国の経済背景には常に中国政府の後ろ盾がありました。
2008年のリーマン・ショック直後、急激に落ち込む輸出を補うため2008年11月に4兆元(約66兆円)もの大型景気対策を打ち出し内需を拡大。
鉄鋼などの製造業を中心に公共事業や設備投資を増大させ、中国人民銀行も大幅な金融緩和をおこなって企業に資金を融資していきます。
2008年から2013年の5年間で中国は世界のGDPを一国で牽引し、全世界のGDPの3分の1をたたき出し、2010年には経済で低迷する日本を抜き去りGDP世界2位に。
国内消費が活発になり世界の企業がこぞって中国の消費者に商品を売り込み、世界でも有数の消費大国へと変貌していきました。
2013年に入ると中華人民共和国 第5代最高指導者 習 金平 国家主席体制が始まります。
習 金平 国家主席は銀行融資による融資金額の超過は金融危機を招きやすいため融資規模を減らし、銀行による間接融資ではなく株式市場や債券市場からの直接融資にシフトするよう構造改革を進めていくことになります。
しかし中国政府の思惑とは裏腹に上海総合指数は瞬く間に上昇し調整局面など見ることもなく、ほぼ倍まで上昇する異常事態に。
熱狂的な相場にあおられた上海市場ですが2015年6月12日に最高値つけたあと急激に落下、そのままズルズルと下落していき8月11日に経済指標などの不振を理由に中国人民元の切り下げを実施、そのうえ12日天津で大爆発事故が起こり世界同時株安に発展しました。
この2015年のチャイナ・ショックを救ったのもまた中国政府でした。
翌年2016年1月4日、中国の12月の製造業購買担当者指数が市場予想をはるかに下回り上海市場が暴落、世界の株式市場でも連鎖的に広がり再び世界同時株安を引き起こす形に。(上海市場では強制的に取引を停止するサーキットブレーカーが発動されました)
急激に発展を遂げた中国経済でしたが、2015年以降その裏にある銀行融資による企業の多額の債務や鉄鋼、自動車、造船などの過剰生産、入居者のいない集合住宅や工場がない工業団地など先送りしてきた問題が徐々に浮き彫りになっていきます。
そして2015年7月に立ち上げた国家戦略のひとつである「中国製造2025」というプロジェクトがあります。
2025年には最先端テクノロジー分野などの10項目の重点分野と23品目を設定し、自国生産に向けて製造業の高度化を目指すプロジェクトです。
ゆくゆくは中国が建国100周年の2049年に全世界の製造業の覇権をとるという壮大な国家プロジェクトなのですが、この国家プロジェクトに参加する企業に中国政府から補助金や減税、低金利での融資をおこなっています。
なんか2008年のリーマン・ショック時に似ているよな気がしますが、今回の中国政府は行き過ぎた優遇措置により過剰な設備投資と過剰な供給により需要と供給バランスを崩さないよう警戒をしています。
対外的に見ても中国政府がおこなっている企業への支援策に関しては、各国が不公平感を露わにしていますが、いくら批判を浴びようが中国政府が支援策を止める気配はありません。
労働力と大量の資金投入では経済成長が見込めなくなった中国には、技術革新による新たな分野での覇権が必要となってきたのでしょう。
2008年11月に中国政府が打ち出した大型景気対策の過剰債務を抱えた企業が、米中貿易戦争での景気悪化から借金を返せず倒産、連鎖的に債権を回収できずに銀行も収益が悪化し破綻してしまう金融システム上の不安がある中、この米中貿易問題を中国側がどう打開していくのか今後の中国政府の対応がカギとなってくる気がしますが。